罪悪感の原因2
私の姉は12歳年上だ。
母は姉を産んで、姉が小学校6年生になって私を妊娠した。
これはちょっと珍しい。
周りには歳の近い兄弟の子がたくさんいるし、大家族でもない限り12年も歳が離れるなんて聞いたことがない。
私も中学生にもなると、夫婦の営みがあって子供ができるということがわかってくる。
すると疑問が湧いた。
姉と私の間の空白の12年はなんだったんだろう。
その間、第二子をつくるつもりでできなくて12年空いてしまったのか?
セックスレス状態で、たまたま久しぶりにしたら命中しちゃったのか?
大胆だった私は母に聞いた。
「私って、ちゃんと計画されて産まれてきたの?」
母の返答はこうだった
「ちゃんと欲しくて作ったのよ!!計画通り!お父さんは勉強で忙しくて、ちっともそういうことがなかったんだけど久しぶりにそういうことがあって...わたしは受け入れ態勢万全で...」
ちょっと赤裸々すぎた。
姉は言った。
「まさか小学6年生にもなって、自分は一人っ子だと思ってたから私子ができたって聞いたらすごく嬉しくて周りに言いまくったんだ。そしたらお母さんがね、『恥ずかしいからあんまり言いふらさないで』って...」
ん?と当時の私は思った。
私ができたことを、周りに言われるのが恥ずかしいと母は思っていた...
いや、今なら分かるよ。
40になって小学生の娘がいて、あら随分ご無沙汰だったのねーとかまだまだ仲良しねーお元気ねーとかゲスなことを思われちゃうかもしれないって。
でもなんか私としては胸を張って「やったー!できたぞー!念願の子だー!」って思って欲しかったというか...
母はああ言ったが、おそらく私は予想外にできちゃった子だった。
まさか、の子だった。多分。
そしておそらく、男の子を望まれていたのではないだろうか。
私の母には姉がおり、嫁いで他の名字になった。
母は私の父を婿にとり、後継となった。
母としては、せっかく後を継いだのだから家を存続させたいだろう。しかし、姉は一人っ子で女の子。どうしようかと思っていたら、私ができた。
キタコレー!!男の子だったら家を継いでもらおう!
と絶対思っただろうな
私の前では決して口に出さないけど
高齢で、まさかで出来た子がまた女の子...
がっかりさせてしまったのかもしれない。
そしてまた、私の家には特殊な事情があった。
司法書士の試験には落ち続け、そのたびに仕事を辞めたり転職したりを続けていた。
母は学会の活動ばかりで一切働かなかった。
うちの生活費は、祖母と祖父がほとんど出していた。
そんな中で私ができた。
祖母が言うには
「なんでしっかり稼ぎもしない夫婦が子供だけつくって、とびっくりしたよ。この夫婦はどういうつもりなんだか...ってね」
とのことだ。これは私が社会人になってから祖母が教えてくれた。
私は驚いた。
なんでそんな状況で子供つくる!?
祖母と祖父は特にそう思っただろう。
自分たちの老後に、と思っていたお金が食いつぶされていくのだ。
そしてそんな気持ちを、私は幼かったけれど感じてしまうことがあったのかもしれない。
無意識のうちにでも。
潜在意識の中に。
記憶に残る限り、直接的にそれを言われたことはないけれども。
私は、いていいのかな
産まれてきてよかったのかな
そう思ってしまうには、十分すぎる環境が揃っていた。